公共サービスキャンペーン

市従「公共サービスキャンペーン」の取り組み

小泉政権は「官から民へ」、あるいは「改革なくして成長なし」など、「市場原理万能主義」を掲げて、規制緩和や労働市場の自由化を進め、その結果一部の企業のみに富が集中し、中小企業の倒産・廃業が増加し、実感のない成長と需要の低迷が続いてきました。
加えて、セーフティネットを張らないままの市場主義は、「ワーキングプア」と呼ばれる新たな貧困層を生み出すなど、格差の拡大という社会問題を引き起こし、「自己責任」という名のもとに、公共サービスが「安上がり」だけを求めて民営化されるなど市場に委ねられ、切り捨てられてきました。
財政再建が最優先され、医療、生活保護、障がい者支援など社会保障や就労支援予算も抑えられてきました。
その結果、国民の暮らしが危機的な状況にあっても、それを支えるセーフティネットはすでに失われています。

市民の暮らしを支えるセーフティネットとしての公共サービスを再構築・再整備し、さらに社会や経済の変化に対応しうる仕組みに改革することが求められています。

わたしたちは、今後も公共サービス基本法の活用や公共サービス基本条例制定の取り組みを進めることにより、弱肉強食の競争社会ではなく、生活の安心・安全が確保され、人々のニーズに合い、必要とする誰もが必要とされる公共サービスの実現をめざしていくことが必要だと考えています。

市従は、地域のセーフティネットの確立と公共サービスの質を担保し、市民・利用者のニーズに的確に応えたより良い公共サービスの実現に向け、自治労の「公共サービスキャンペーン」と連動したとりくみを展開しています。

大阪市従「公共サービスキャンペーン」第1弾(2007年4月22日)

―「『食』から公共サービスを考える」シンポジウム―

食に関する安全対策について市民・消費者のみなさまから信頼される「食」づくりと安全・安心な「食」の情報を市民・事業者・行政が共有し、病院では患者さま、学校・保育園では子どもたちの栄養バランスなどそれぞれの立場からの役割の議論を通じて「食」から公共の役割について考えました。

●椎山松記さん
●「大阪うまいもん唄」の合唱の様子

第1部では、医業経営コンサルタントの椎山松記さんから、「消費者(市民)から信頼される公共としての食づくり~安心と安全」と題して講演を受けました。椎山さんは食の安全と消費者意識について問題提起した後、質と安全を軽視した外部委託の問題点についても指摘しました。
休憩時間には、大阪市立大学付属病院の病院食の紹介、学給労から学校給食、大阪市従民生支部から保育所や福祉施設の調理などのサービス紹介。続いて、かわいい園児たちによる「大阪うまいもん唄」の合唱の披露。会場も手拍子で盛り上げました。

第2部では、「『食』の安全を守る公共の役割」と題して、パネルディスカッションを行い、食品衛生等を手がけるサラヤ株式会社の森田和矢さんをコーディネーターに、大阪青山大学の藤原政嘉教授(元栄養士)、大阪市健康福祉局の五島照和保健主幹、学校給食を考える会の野田克己事務局長、とよなか市民会議アジェンダ21高島邦子理事がパネラーとして参加。藤原さんからは医療の一環として病院食が果たす役割について、五島さんからは国民から信頼を得るための食品安全行政について説明がありました。
野田さんは学校給食は教育の一環であり、「子どもたちに何を伝えたいのか」という明確なビジョンを持って関わるべきだと述べました。
高島さんからは豊中の市民と行政のパートナーシップを基本にした地産地消、循環型社会への試みについて紹介がありました。終了後のアンケートには食の安全確保や、よりよいサービスのために何が必要か多くの意見が寄せられ、参加者の意識の高さがうかがえたことから、市従は、今後も継続して市民とともに考えるシンポジウムを開催することとしました。

 

大阪市従「公共サービスキャンペーン」第2弾(2008年4月6日)

―「地域防災」を通じ公共サービスと地域コミュニティを考える―

大阪市で大規模災害が発生した場合に、被害を最小限にくいとめ、速やかな復興に結び付けていくための、地域防災活動における公共の役割について、障がい者支援の立場や民間の防災コンサルタントの話も聞きながら考えました。

●風間教授
●法橋聡さん
●パネリストの皆さん

第1部では、同志社大学政策学部の風間規男教授から「助け合い支えあう街の『防災活動』と自治体」と題した講演を行いました。
風間教授は「災害に対して効果的な対策を進めるには地域の防災力を高めることである。阪神・淡路大震災時に、消防や自衛隊に救出された人の半数がすでに死亡していたのに対し、近隣住民が救出にかかわった場合の生存率は80パーセント。地域力を高めることが大切だが、それは『意図的』に作る必要があり、地域力再生のきっかけとなるテーマはさまざまであるが、命にかかわる防災をテーマにし、地域防災力の強化が求められている。公共サービスの担い手には、相手の痛みを感じる感覚と、地域の組織と組織のネットワークを結ぶ能力が求められている」と話されました。また、地域の防災力を考える時に「地域の強み」を活かし、「弱み」を克服し、「機会」をとらえて「脅威」を乗り越える戦略を立て、地域の防災力を高める手法を提起されました。

第2部では、近畿労働金庫地域共生推進室長の法橋聡さんをコーディネーターに、株式会社ランドシステム研究所代表取締役社長で近畿大学理工学部非常勤講師の岡本茂さん、NPO法人「ゆめ風基金」理事の八幡隆司さん、大阪市従業員労働組合の藤本初雄副執行委員長をパネリストに迎え、「地域防災、市民と公共のあり方」をテーマに、パネルディスカッションを行いました。防災の専門家として、地域の中堅アドバイザー的に行政と市民の間で活動されている岡本さんからは、住之江区での活動にもとづいた多角的な問題提起に加え、市も区も対応できない地区単位での防災・減災に向けて、防災アドバイザーと防災リーダーに加えて、地域で働き地域を熟知している、市従のスタッフが加わった防災マスターグループの設置が提起されました。

また、要援護者を含めてすべての市民を対象に、地域からのネットワークづくりをすすめてこられた八幡さんからは、これまでの災害などの事例から、避難所における課題が提起され、早急な福祉避難所の確保の必要性が訴えられるとともに、地域で働く現業職員と、その労働組合の役割について話され、藤本副委員長からは、労働組合である大阪市従が、このような市民的なキャンペーンを開催する意図について、これまで行ってきた復興支援活動から気づいた課題と公共サービスを担う行政・組合の役割について提起がありました。コーディネーターの法橋さんは最後に「労働金庫は、その金融機関としての能力を、金融の流通だけでなく、地域をつなぐ活動にも役立たせる努力をさせていただいている。おなじように、大阪市従は労働組合でありながら、権利闘争だけでなく地域・市民・行政をつなぐ役割を進められているが、さらにすすめてほしい」と締めくくりました。

 

大阪市従「公共サービスキャンペーン」第3弾(2009年6月13日)

―まちの環境整備から市民とつながる自治体を考えるシンポジウム―

環境にやさしいまちづくりを推進している職場の立場からの議論を通じ、少子・高齢化社会を迎えた各自治体におけるセーフティネットの確立に向けた行政と市民の関係性や市民協働の必要性などについて考えました。

●岩崎恭典教授
●パネルディスカッションの様子

第1部では、講演に立った、岩崎恭典・四日市大学教授は「日本は2005年を境に人口減少社会に転じた。13~15年後には団塊の世代が後期高齢者となり、扶助費が高騰する。セーフティネットに税金を使うためには他の事は市民にやってもらうなど、行政と市民の関係性についてこれまでと違った仕組みを考えざるを得ない。千葉県松戸市がマツモトキヨシ市長のときに、市民顧客主義に立って『すぐやる課』をつくり好評だったが今ではもう無理。行政があまりにも引き受けすぎた仕事を市民に返すときがきた。昔は身近なことは地域のコミュニティで解決していたが民への分権が必要だ。団塊世代の大量退職は働くことのできる高齢者を生み出す。うまく参加を手繰り寄せることだ」と述べ、市民協働の必要性について提起されました。

第1部では、講演に立った、岩崎恭典・四日市大学教授は「日本は2005年を境に人口減少社会に転じた。13~15年後には団塊の世代が後期高齢者となり、扶助費が高騰する。セーフティネットに税金を使うためには他の事は市民にやってもらうなど、行政と市民の関係性についてこれまでと違った仕組みを考えざるを得ない。千葉県松戸市がマツモトキヨシ市長のときに、市民顧客主義に立って『すぐやる課』をつくり好評だったが今ではもう無理。行政があまりにも引き受けすぎた仕事を市民に返すときがきた。昔は身近なことは地域のコミュニティで解決していたが民への分権が必要だ。団塊世代の大量退職は働くことのできる高齢者を生み出す。うまく参加を手繰り寄せることだ」と述べ、市民協働の必要性について提起されました。

また岩崎教授が「まだまだ縦割り市政の現実のなか、現場での取り組みとその発信が大切だ」と述べたことに、南さんは「地域にはいろいろな立場の人がいるが、まちを綺麗にしたいという同じ目標を持つもの同士、その調整役こそ自分たちの仕事だ」、菊井さんは「地域での協働を促進させるとともに、現場の持つ地域の情報を行政財産として整理して市政に反映することが必要で、そこから政策を生み出すことが効果的な市政につながる、また市民と行政のつなぎ役を担うのがこれからの自分たちの役割だ」、久森さんからは「市民の要望をすべて叶えられる時代ではない。待ちの姿勢ではなく、こちらから出向いて協働を促進させていくよう職員の意識を変えなければならない」などと述べました。
議論内容を踏まえ岩崎教授は、基礎自治体の大阪市として「補完性の原理」によって市民協働や啓発活動のとりくみをより一層推進し、維持すべきセーフティネットを構築することが求められているとのまとめを行いパネルディスカッションを終了してきました。

 
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